
難産の危険はママだけでなく赤ちゃんにも及びます。
難産によって赤ちゃんが命の危険がある状態で生まれてきたり、あるいは無事に生まれてきても後遺症が残ることもあります。
今回は難産による障害や難産の原因などについてまとめてみます。
目次
難産とは?
難産とは、「人の助けなしには分娩が困難な状態や分娩が不可能な状態、規則的な陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれ胎盤が出てくるまでの時間が長い出産」のことをいいます。
初産では30時間以上の分娩、経産婦では分娩に15時間以上かかるとき、難産といわれることが多いです。
赤ちゃんはママのお腹にいるときには羊水に守られています。羊水の中は無菌状態なので感染症のリスクはなく、また、赤ちゃんは肺呼吸もしていません。
酸素も栄養も全部、ママからもらっているからです。しかし、破水が起こり羊水がなくなると、赤ちゃんは無菌状態ではなくなり、感染症のリスクにさらされます。
また、破水から出産までに時間がかかりすぎると、赤ちゃんは酸欠状態になります。心拍数も低下します。
スポンサードリンク
難産による赤ちゃんへの影響は?障害のリスクも!?
難産になると赤ちゃんは酸欠状態が長く続きます。酸欠状態(低酸素)が長く続くと、脳や内臓にダメージを与え、最悪死に至ります。
また、出産後には難産の影響がなくても、数年後に後遺症としてあらわれることがあります。
難産による赤ちゃんへの主な影響や障害のリスクがこちらです。
・低酸素脳症による脳性麻痺
知的障害や体や四肢を自由に動かせない運動障害、てんかんになることもある。
・てんかん
脳の一部がダメージを受けることで起こる。単純部分発作(意識あり、痙攣や手足がつっぱる)と複雑部分発作(意識なし、急に動作をとめたりふらふらと歩く)がある。
生まれてすぐではなく、成長するうちに発症することもあります。ただ、てんかんの原因は難産だけではありません。
・胎児仮死、新生児仮死
難産による低酸素状態が続く心拍数が落ちると、胎児仮死になります。脳や内臓に障害が起こり、最悪死産となります。
出産したときには新生児仮死となり、脳性麻痺や呼吸障害、心筋障害、腎不全になったり、脳障害などの後遺症がのこることがあります。
脳障害による運動障害や知的障害は、生まれてすぐにあらわれる場合もあれば、1~2歳になってから発達のおくれとしてあらわれることもあります。
・肩甲難産
ママの骨盤が小さく産道が狭かったり、赤ちゃんが大きすぎると赤ちゃんの肩がひっかかることがあります。
妊娠高血圧症候群や妊娠中にママの体重が増えすぎたとき、高齢出産で起きやすいです。
ひっかかった肩を直すのに時間がかかっているうちに赤ちゃんが死亡してしまったり、肩の神経が傷つき腕に麻痺が残ることがあります。
難産で発達障害になる?
発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、ADHDなど、社会性に関連する領域にみられる障害で生まれつきの脳の障害です。
難産による障害や後遺症は、麻痺などの運動障害や知的障害にあらわれ、難産と発達障害には直接的な関係はありません。
つまり、難産によって発達障害になるということはありません。
「難産だったから発達障害になった」という体験談を耳にしたことがあるかもしれませんが、それは原因と結果が逆、
発達障害だから難産になった可能性がある(発達障害だからといって必ず難産になるわけではなく、また、難産で生まれた子が発達障害だったからといって難産の原因が発達障害とは限らない)、と考えます。
スポンサードリンク
難産の原因は?
難産の原因はママにある場合と赤ちゃんにある場合があります。
まず、ママに難産の原因がある場合や難産になりやすいママの特徴からご紹介します。
・骨盤が小さい
身長が低く小柄・華奢なママは、骨盤も小さいため難産になりやすいです。
ママの身長が150cm以下のときには、出産前に骨盤の大きさを計測し、自然分娩が可能かどうかを調べます。自然分娩が難しいときには、帝王切開となります。
・低齢出産、高齢出産
15歳以下での出産は、骨盤が小さかったりホルモンバランスが不安定なため難産になりやすいです。
また35歳以上での出産は、赤ちゃんを押し出すためのいきむ力が弱かったり(娩出力が小さい)、産道や子宮口がかたいため赤ちゃんが産道を通りにくく、難産になりやすいです。
・痩せすぎ、体力や筋力不足
出産に必要な体力筋力が不足すると、いきむ力が弱かったり長続きしなかったりして、難産になりやすいです。
また、母体が栄養不足だと赤ちゃんも栄養不足のことが多く、ママだけでなく赤ちゃんの生まれてくる力が不足していることがあります。
ちなみに本陣痛から出産までに消費されるエネルギーは2000㎉ほど、ママは最低これだけの体力やエネルギーは体に蓄えておく必要があります。
・太りすぎ
妊娠中に太りすぎると、産道に脂肪がついてしまい産道がせまくなり、赤ちゃんが通りにくくなります。また、太りすぎの方は微弱陣痛になりやすくなかなか本陣痛がこないことがあります。
・冷え性、ストレス
陣痛とは子宮収縮のときの痛みのことです。冷え性で血流が悪いと、子宮の収縮がうまくできません。微弱陣痛が続き、出産が長引きます。ストレスも血流悪化の原因になります。
赤ちゃん側の難産の原因とは?
難産では、ママではなく赤ちゃん側に原因があることもあります。
・胎位の異常(逆子など)
・へその緒がからまる
・回旋の異常(産道を通るとき、体をうまく回転させることができる引っかかる)
・巨大児
・多胎児(双子、三つ子)
逆子や巨大児などで、事前のエコー検査などで医師が自然分娩は難しいと判断したときには、最初から帝王切開を選択することがあります。
妊娠高血圧症候群(妊娠糖尿病)は巨大児の原因になります。難産を予防するためにも、妊娠中は食生活に気を配り、妊娠高血圧症候群にならないようにしてください。
関連記事:妊娠高血圧症候群で前兆の症状は頭痛や胃痛や動悸?その原因と対処法
難産になったら?
難産で自然分娩を継続することが難しくなったときや、難産になりそうなときには以下の処置が施されます。
・医師や看護師がママのお腹を押して、分娩を促す
・微弱陣痛が続くときには陣痛促進剤、それでもだめなら帝王切開
・吸引分娩(赤ちゃんの頭にシリコン製や金属製のカップを装着し引っ張り出すこと)
・鉗子分娩(金属製のヘラで赤ちゃんの頭をはさんで引っ張りだす)
・帝王切開
吸引分娩や鉗子分娩では、生まれたばかりの赤ちゃんの頭が変形することがありますが、赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかいので、そのうち自然に元の形に戻ります。
吸引分娩や鉗子分娩で、頭蓋内出血が起きると脳性麻痺や脳障害などの後遺症が残ることがあります。
まとめ
以上が、難産による障害や難産の原因などについてでした。
難産では赤ちゃんに後遺症が残ることがありますが、難産によって発達障害になるということは今のところ、ないといわれています。
難産の後遺症は運動障害や知的障害などです。
妊娠中は難産にならないように、体重をコントロールしたり妊娠高血圧症候群を予防する、適度な運動で体力をつけておきましょう。
冷え性やストレスの解消も大切ですね。冷え性は筋肉をつけると改善するので、運動は体力向上と冷え性改善の一石二鳥です。
体格や高齢出産、双子の出産などで前もって難産になる可能性があると分かっているときには、
「万が一難産になったときにはどのような処置をするのか」を事前に医師や家族と相談しておきましょう。帝王切開も視野に入れておきます。